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こどもの“つくる”を応援する キャンバスマガジン

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「デジタルえほん」の今とこれから#01

さて、子どもたちを魅了してやまないこれらアプリをどういう人たちがつくっているのでしょうか?Toca Boca本社を訪ねてきました。

入るとすぐに広がるのは開放感溢れるクリエイティブな空間。Toca Bocaの世界観そのままのオフィスにて創業者であるエミル・オヴェルマー(Emil Ovemar)さん、デザイナーであるマティルダ・エグマン(Mathilda Engman)さんにお話を伺うことができました。

左:創業者のエミル・オヴェルマー(Emil Ovemar)さん
右:デザイナーのマティルダ・エグマン(Mathilda Engman)さん

創業者であるエミルさんは、共同創業者のビョルン・ジェフリー(Björn Jeffery)さんと出版社のR&D部門で働いていた際に、新しい子ども向けデジタルプロダクトの可能性を見出しました。そのヒントをくれたは、当時3歳と8歳だった子どもたちの存在でした。今から5年前のある日、エミルさんの子どもたちは遠隔ビデオサービスを立ち上げて、二人でかくれんぼをしていたそうです。タブレットを介してお互いの顔は見えているのに姿は見えない。「ど~こだ!」とタブレットを利用して、隠れ、そして探していました。そう、彼らは大人とは違うタブレットの扱い方をしていたのです。彼らにとっては、タブレットは新しいテクノロジーではなく、おもちゃの1つでした。「彼らは、与えられたゲームをするのではなく、テクノロジーを使って、新しい遊びをしたいのだ!」

そうして2010年秋、Toca Bocaが誕生します。ゲームではなく、ビデオでもなく、デジタルのおもちゃをつくりだすこと。それこそがToca Bocaが創業から追い続けているビジョンです。

 

「子どもたちにとって、いつの時代も遊びはとても貴重なものです。新しいテクノロジーを活用した遊びも、いつかは伝統的な遊びになっていきます。マインクラフトはとてもいい例です。マインクラフトは今の時代の新しい積み木を作り出しました。私たちは伝統として残っていくような新しい遊びをつくりたいのです。」

 

まず取り組んだことは、子どもたちが伝統的な遊びを楽しむ姿を徹底的に観察すること。子どもたちが熱中するおもちゃは、「ロールプレイング」、「創造型遊び」、「探究型遊び」の3つだと気が付き、その3つの分類に基づき、アプリの開発をスタートさせます。

まずはプロトタイプをつくり、子どもたちの反応を確認する。子どもたちの反応を観察することは、創業時から大切にし続けている開発のモットー。2011年には10のプロトタイプをつくり、子どもたちに遊んでもらいました。その中から生まれたのが、「Helicopter Taxi」と「Toca Tea Party」なのです。今までに見たことのない新感覚のアプリ。子どもたちはフィジカルなヘリコプターをもって遊ぶ、iPadというテーブルを囲んで友だちと一緒に遊ぶ。アプリというよりもまさにデジタルおもちゃでした。

初めてのアプリのリリースとあわせて、Toca Bocaは自分たちが提供する3つの価値を定めたと言います。

「ハイクオリティ」。これまでの作品を常に見直し、良いアプリをつくり続け、子どもたちたちを飽きさせない。そして、アプリ内での広告や課金は一切いれず、子どもの安全を確保する。

「ジェンダーニュートラル」。男の子も女の子も別け隔てなく遊べる。そして、言語も説明もなく、どの国でも受け入れられるような世界観をつくる。

「遊び重視」。子ども目線に立ち、遊びに最大限の価値をおく。子どもたちは遊びを通じて世界を知り、たくさんのことを学びます。だからこそ教育的にならず、遊びを重視する。ゲームでもない。故に、ルールもレベルも、あらかじめ決められた結末もありません。子どもたち自身が考えながら遊ぶからこそ、森の中で遊ぶように、無限に遊び続けられるのです。

主たるターゲットは3~9歳ですが、この3つを追いかけた結果として10代の子どもたちも楽しんでくれていると言います。

 

これだけ高品質の作品をつくり続ける秘訣を尋ねると、3つの価値を大切にしてより良い作品をつくり続けるということに加え、

1.常に子どもたちのフィードバックを得ながらつくっていること
2.すばらしいチームを構築していること

の2つを挙げてくれました。

つづく

第2話:Toca Bocaの世界観
2016.06.01 公開
第3話:Toca Bocaファミリー
2016.06.01 公開
第4話:5つの決まり
2016.06.01 公開
第1話:創造・表現する楽しさ
2016.06.02 公開