CANVAS

こどもの“つくる”を応援する キャンバスマガジン

CANVAS REPORT #02 Children's Musem 第2話

チルドレンズ・ミュージアム紹介第2弾。(「子どもの創造力スイッチ」より転載。)

ニューヨーク市マンハッタン島南部のソーホー地区にあるのは「チルドレンズ・ミュージアム・オブ・ジ・アーツ(CMA)」。画廊やアトリエが建ち並び、アーティストやデザイナーが多く住む地域にふさわしく、アートに特化した子どものためのミュージアムです。10ヶ月から15歳の子どもを主たる対象としています。

「アートは子どもたちの自信と自己表現の力を育む」というのがCMAの考え方です。特に「協同でアート作品をつくる」プロジェクトを通じて、他者を尊重し、衝突を解決し、自分への理解も含め、コミュニティを生み出す社会性を身につけることができると考えられています。また親子の絆を深めることにも寄与すると強調します。

©Children’s Museum of the Arts

訪問した際に、まず目にとまったのがアートラボ。クレヨン、絵の具、粘土、スタンプ、スライム、レゴ、色画用紙。様々な道具が置かれ、壁にはたくさんの子どもたちの作品が飾られています。紙にスタンプを押したり、壁に絵を描いたり、粘土で遊んだり。訪問したのがランチの後の時間であったため、小さな子どもたちが空間をフルにつかって、自由に表現して過ごしていました。しばらくするとお兄さんとお姉さんがたくさんの打楽器を持って現れます。そして、お話を読み聞かせてくれる。子どもたちがよく知っている曲をアカペラで歌ってくれる。子どもたちは、思いのままに太鼓をたたく。その瞬間だけはみんなが一体となります。お兄さんお姉さんといってもプロのアーティスト。とても贅沢な時間です。アートラボは、アートタイム、ストーリータイム、ミュージックタイムの3つで構成され、10ヶ月の子どもから参加できるプログラムが用意されています。

©Children’s Museum of the Arts

階段を上るとメディアラボと呼ばれるスタジオがあります。コンセプトは新しいテクノロジーを使って、協同でストーリーテリングをするということ。15 歳くらいまでの子どもたちを対象としてアフタースクールプログラムを提供しています。具体的には、アニメづくりや映画づくりに取り組んでいます。キャラクターづくり、背景のセットづくり。そして、パソコンとカメラが設置してあり、録音に、コマ撮り。つくった作品は映画祭で上映しているとのこと。CMA入口の壁にも作品が大きくプロジェクターで投影されていました。

©Children’s Museum of the Arts

CMAは、アーティストとのアート体験の提供の他に、世界中の子どもたちの作品の収集とその常設展示も行っています。1930年代から遡り、50カ国以上から2000を超える子どもたちの作品が集まっているそうです。私が訪問した際には、その子どもたちの作品と絡めた「face to face」という企画展が行われていました。肖像画を通じて自分自身や自分の個性を探求するというもの。子どもたちは、伝統的な手法としてのデッサンや絵画、もしくは最新のテクノロジーを通じて、静止画及び動画の肖像画を見たり、描いたりします。その日も、小学校から授業の一環で訪問をしていた子どもたちが、他国の子どもたちの描いた肖像画の前で、肖像画を描いていました。

CMAは、学校からの訪問の受け入れ、学校に出向いてのワークショップの提供、学校の先生向けの研修プログラムの提供を通じて、アートを通じた学びを学校教育の中に取り入れようとしているところも特徴の1つと言えます。

©Children’s Museum of the Arts

さて、CMAの空間の中で、最も気になったのが次の写真の「粘土バー」。カウンターに高い丸イス。紫のちょっと薄暗い光。カウンターの向こうにはバーテンダーのような若い男性が1名たっています。もちろんバーテンダーではなく、粘土の先生。「ピンクの粘土をください」子どもが声をかけ、「はい、ちょっと待ってね」と赤と白の粘土をまぜてピンクをつくり、子どもたちに手渡します。今日のテーマは「宇宙人」。子どもたちはバーカウンターに座って思い思いの宇宙人をつくります。たまにくれるアドバイスにもとづいて粘土をちょっといじると、宇宙人に表情が生まれたり、躍動感がでてきたり。声のかけ方が何とも絶妙です。

一緒に訪問した、もちろんまったく英語を知らない3歳の息子も、気がつくと「ブルー!」と、英語でバーテンダーにオーダーをしていました。

 

ニューヨーク チルドレンズ・ミュージアム・オブ・ジ・アーツ
2019.11.23 公開