— 街が舞台。新たな熱気に包まれた
ワークショップコレクション 11 in シブヤ
私たちCANVASが2004年からスタートさせた“世界初”のこども向けワークショップの博覧会『ワークショップコレクション』も今年(2015年)の8月29日、30日の開催でもう11回目になります。これまで大学のキャンパスを舞台に開催してきたワークショップコレクションは2013年には2日間で10万人の来場者を数えるほどの大きなイベントへと成長しました。今年は、そんな「世界最大級のこども創作イベント」を通じて、さらなるコミュニケーションの可能性、こどもたちの創造・表現の可能性、プレーヤーたち同士のつながりをより広げるべく、東京の文化の中心とも言える『渋谷』という街に舞台を移しての『ワークショップコレクション11inシブヤ』の開催となりました。
悪天候をものともせず、新たな熱気に包まれた新感覚のワークショップコレクション11。このキャンバスマガジンではこの2日間のイベントの様子を、2ヶ月たってクールダウンした秋の気配に乗せて、少しずつレポート・アーカイブして、みなさんと創る次のワークショップコレクションへのステップにしていけたらと思います。
— こどもが主役の2日間!
ワークショップコレクションでできる8のこと!
今回のワークショップコレクションを開催するにあたって、『ワークショップコレクションでできる8のこと』を活動のテーマに様々なジャンルのワークショップを展開しました。その1つ1つをたどりながら、レポートを進めていきたいと思います。
まず1つ目は、ワークショップコレクションの基盤にもなっている約150のワークショップ・プログラムの集結です。創造力・表現力をシゲキするワークショップが全国から大集合することで、こどもたちの、造形・サイエンス・絵画・イラスト・音楽・電子工作・身体表現などなど、多種多様なジャンルに対する興味関心を、様々な切り口で幅広く実現することができました。同じジャンルや同じ道具でも、各ブースのファシリテーターやアーティストの個性や、参加するこどもたちのアイデアによってワークショップの形や遊び方が変わっていきます。その違いを楽しめるのも、たくさんのプレーヤーが集まるワークショップコレクションならではの魅力といえます。そして、ワークショップコレクションは、こどもたちのためのイベントでもあると同時に、全国に点で存在するワークショップ主催者のみなさんのためのイベントでもあります。「ほかの方々はどんなワークショップを運営しているのだろう」「同じ道具をどう活用しているんだろう」。それぞれが各地域で点で活動していると、なかなか共有できない情報を、共有しあえる場でもあります。こどもを楽しませるアイデア、上手に流れを説明するための方法など、プレーヤーの数だけ様々なアイデアがあります。彼らのアイデアから私たちが学ぶように、このような情報共有が、これからのワークショップをよりよいものにしていくと感じています。
次に、今回のワークショップコレクションのメイン会場でもある『渋谷のビル』ならではの『できること』があります。2棟のオフィスビルが今回のワークショップコレクションのメイン会場となりました。しかもこのビルは取り壊し直前のオフィスビル。会場内の壁・窓・床・天井など空間全体がこどもたちに開放され、様々なワークショップ・プログラムが繰り広げられます。取り壊し前で空っぽのビルはまるで、昔、誰もが夢見たヒミツ基地のようで、こどもたちだけではなく、おとなたちの心さえも刺激するワクワク・ドキドキのきっかけはこの2つのビルにあります。
そんなビルを舞台にワークショップコレクション11でできる2つ目のことは『ビルいっぱいにラクガキ!』です。取り壊しの決まったビルですから、こどもたちは普段は「ダメ」と言われている『ラクガキ』を思い切り楽しむことができます。こどもたちの自由な創造力・表現力のためには、その自由な感性をからだいっぱいに発揮できる環境を、時におとなたちが用意してあげることが大切です。最低限のルールと大きなキャンバス。今回は思い切ってビル全体をキャンバスにできるような絵描き・アート系のプログラムを招致し、こどもたちの夢を叶えることにしました。
例えばビルのエントランスからはじまる大きな壁へのペイントワークショップは、想像以上にこどもたちを輝かせました。会場に入るなり「壁に自由に好きな絵を描いていいよ」と、たくさんの鮮やかな絵の具と筆を渡されます。自由すぎる空間にパパとママはとまどいを隠せない様子ですが、こどもたちの「ソウゾウリョク」のスイッチはここで一気に ON になります。まるでアーティストさながらの表情で大きなキャンバスに向き合うこどもたちの勢いに飲み込まれて、パパとママはすっかりアシスタント状態。「あの色持ってきて!」「届かないからおんぶして!」。おとなもこどもも夢中になって1つの大きな大きなウォールアートを完成させていました。
3つ目の『できること』は、『最先端のデジタル技術による未来の学び体験』です。全身を使ったラクガキアートや、スポーツ型のゲーム、昔ながらの手や道具を使った直感的なものづくり体験のにぎわいとは対照的に思われがちなプログラミングやパソコンを駆使したデジタル系のワークショップですが、ワークショップコレクションにおいては、上記のアクティビティ同様の熱気に包まれます。ワークショップコレクションのために世界中から集まった『デジタルえほん』の前では、こどもたちはおとな顔負けの手つきでタブレット端末の中のえほんのページをめくって、その1つ1つのプログラミングによるアクションを楽しんでいます。長蛇の列を作っていた最近話題の3Dプリンタの前では、未知の創造力を前にこどもたちは大興奮。デジタル制御によってものがつくられるその一瞬一瞬を見逃すまいと、目をまんまるに見開いて機械にはりつくこどもたちの表情は、発見と驚きに満ち溢れていました。そしてプログラミングを主体としたフロアの入り口で待ち受けるのは最先端のロボットたち。プログラミングで会話するロボット、動くロボットたちの前では、こどもに負けじとああでもないこうでもないと奮闘するパパたちの姿が印象的でした。その横で一心不乱に集中して電子工作を楽しむこどもたちの真剣なまなざしも普段、なかなか家庭では見ることのできないこどもの表情です。一見、おとなたちから見ると難解そうな電子工作キットを、まるではさみやのりを使うかのようにいとも簡単に組み合わせてつないで楽しむこどもたち。組み合わせ次第で無限の可能性を生み出すであろうこうしたプログラミング体験が、この先のデジタル社会においてこどもたちの『基礎』になるのだと確信しました。私たち CANVAS は、こうした機会を通じて、いかにデジタル学習が未来をつくるこどもたちにとって重要かを、産官学と一体となって考え、伝えていけたらと思っております。
私たちの未来をつくるのは、こどもたちの創造力・表現力。
私たちおとなは、いかにその下支えとなるか。
『ワークショップコレクションでできる8のこと』の中には、そのほかにも、2020年をさきどりする未来のスポーツを体験するアクティビティ型のワークショップや、都会の真ん中のオフィスビル内でも木々や緑を感じられるような、空間演出としての公園づくり。そして、『シブヤ』という街だからこそ『ソウゾウ』できるシブヤミライ人を描いたり、ビルを飛び出して、ミライのシブヤを作り出す渋谷駅前での工事現場を探索し、未来の街がどうやって作られるのかを学ぶ体験など、シブヤを感じる未来を描くワークショップなどもありました。それは、こどもたちが体験として『できること』だけではなく、『未来』へ向けて私たちおとなが『できること』でもあったかのように思います。
ひとりひとりのワークショップ・プレーヤーはもちろん、企業や街のお店も一体となって、こどもたちと一緒に未来に向けてつながっていくのも今回の『渋谷』でのワークショップコレクションの魅力でもあり、『できること』の1つです。今回は、メイン会場のビルだけではなく、渋谷という街中のコミュニティ・アートスペース、映画館、図書館、ミュージアム、カフェがサテライト会場として『こどもたちの創造・表現のための場』となりました。楽器や絵本づくり、実験、3Dプリンター体験、映画上映などの様々な『体験』が街にあふれ、それぞれがそれぞれの想いで活動に参加し、広くつながっていきました。
これらの『8つのこと』を通じて、それぞれの活動を『点』で捉えるのではなく、『線』でつないで『面』にし、産官学が一体となって1つの大きな運動体として未来に向けて活動していきたいというCANVAS の願いが、ひとつのかたちになってきたように思います。
次回は、そんなワークショップコレクションの『面』=『マップ』の中から、いくつかのプログラムをピックアップし、当日の様子をレポートしていきたいと思います。