CANVAS

こどもの“つくる”を応援する キャンバスマガジン

「デジタルえほん」の今とこれから#01

私が訪問した時にも、オフィスの共有スペースには、小さなふたりの子どもたちがちょこんと座り、作品と向き合っていました。「あの子たちは誰?」と尋ねると「Toca Bocaのお友だちだよ」という返事。その回答にこそToca Bocaの精神が現れているように感じます。これまでに開発に参加をした子どもたちは1500人。様々な年齢と国籍の子どもたちが参加してきました。

「Toca Tea Partyの開発の時には、子どもたちが「お茶をこぼしてもいいはずだ!」と言ったんです。」子どもたちの意見は開発に積極的に取り入れられます。「アプリ内でトイレに物を流せるようにしたのですが、それも子どもたちのアイデアです。」子どもたちは、正しいことだけをやることを好んでいるわけではありません。だからこそ、アプリの中では、実際にやったら怒られるけど、子どもたちがちょっとやってみたくなることもできるようにしているそうです。ネットでも「今度はベッドを入れて!」、「今度は学校を舞台にして!」など、子どもたちからたくさんの要望が届きます。アイデアを取り入れるとすぐに「私の意見を聞いてくれてありがとう!嬉しい!」という反応も。「遊びの世界の監督は子どもたち自身である」というのがToca Bocaの考え方。だからこそ、Toca Bocaを触る子どもたちは、遊びながら自分の物語を次々につくりだしていくのです。

気になるのは、もう1つの秘訣であるそのチームの作り方。
どの制作チームも、6名のメンバーで構成されるのが基本とのこと。

・プレイデザイナー(PD) 1名
・アーティスト 2名
・エンジニア 2名
・プロジェクトマネージャー 1名

そこに、アニメーションや音声などを担当するフリーランスの方が入る。
チームのリーダーはプレイデザイナーと呼ばれ、遊びをデザインするデザイナーだ。プレイデザイナーは、コンセプトづくり及び子どものユーザビリティテストの責任を負う。しかし、トップダウンで決めることはほぼなく、すべてのメンバーがオープンな関係であると言います。プロジェクトスタート時には顔を合わせてアイデアを出し合いますが、その後はオンラインで議論をしながら進めていく。投稿されたアイデアにコメントを出し合い、最終案を決定する。開発期間の平均は1アプリあたり6ヶ月。現在は、6名の制作チームが3本走っているとのこと。これだけの作品を生み出すアーティストやエンジニアをどうやって探してくるのか気にあるところですが、もともとゲームが生活に浸透しているスウェーデンでは、ゲームクリエイターとしてのアーティストやエンジニアは多いといいます。しかし、殆どのゲームが戦いモノ。それに対して、新しい世代のゲームクリエイターたちが、もっとカラフルで明るく、もっと誇れる作品をつくりたいと、Toca Bocaに参画してきたそうです。世界中でダウンロード数1位を連発し続けるToca Bocaですが、意識している会社を聞いてみると、「任天堂」と「LEVEL5」、そして「LEGO」という日本人として大変光栄な回答がありました。改めてオフィスを見渡してみると、そこにはドラえもん、パーマン、ペコちゃん、妖怪ウォッチなどなど日本生まれのキャラクターがたくさん飾られています。

エミルさんをはじめとしてToca Bocaのメンバーは、日本のビジュアル文化に興味があり、キャラクターや世界観をつくるにあたって影響を受けているといいます。創業時からToca Bocaのデザインを統括するマティルダさんも日本のキャラクターやデザインを意識している一人です。特にキャラクターは「日本だけを参考にしている」と言います。

 

つづく

第2話:Toca Bocaの世界観
2016.06.01 公開
第3話:Toca Bocaファミリー
2016.06.01 公開
第4話:5つの決まり
2016.06.01 公開
第1話:創造・表現する楽しさ
2016.06.02 公開