CANVAS

こどもの“つくる”を応援する キャンバスマガジン

手を伸ばせば届く『未来』がここに

2015年8月30日、31日の2日間にわたって渋谷を舞台に開催された、こどものためのワークショップ博覧会『ワークショップコレクション 11 in シブヤ』。世界最大規模を誇るワークショップコレクションには全国からさまざまなジャンルのワークショップが集まり、こどもたちを楽しませてくれました。

今回のワークショップコレクションでは、さまざまな道具や素材を使った工作的なものづくり体験、アイデア次第で、誰でも楽しめるような身体をフルに使ったワークショップなど、過去のワークショップコレクションでも人気だったプログラムは、渋谷の『ビル』という新しい舞台の上で、さらなる賑わいを見せていました。

その中でも、いままでのワークショップコレクションに比べ、出展数も増え、去年までとはまた違った賑わいを見せていたのが、ロボット、3Dプリンター、プログラミング、電子工作、映像、電子楽器といった Making & Coding エリアでした。今回のワークショップコレクションを行う上で、1つのテーマにもなっていた『未来』を感じさせるさまざまなデジタルコンテンツが、次世代のこどもたちの創造力・表現力を刺激します。

 

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渋谷を舞台にしたワークショップコレクション 11 inシブヤのメイン会場の1つ、渋谷 TODビル。2階まで吹き抜けになったエントランスで待ち構える巨大なウォールペイントゾーンをくぐり抜け、エレベーターで5階まであがっていくと、エレベーターホールにまであふれ出したこどもたちの姿。ニコニコというより、ドキドキとワクワクの入り混じった、興奮冷めやらぬ表情で、次はどのワークショップで遊ぶか悩みながらもパパやママの手を引いてまわる子もいれば、とにかく広いスペースがあったら走り回れ!といった具合に、ともだちと思いきりはしゃぐ子。元々、企業のオフィスがあったであろう左右のフロアからは、こどもたちの笑い声と、電子音が聞こえます。

5階に用意された Making & Coding エリアは、今回のワークショップコレクションのスペシャルプログラムの1つ。CANVAS が13年間ずっと力を入れてきた、こどもたちのためのデジタルものづくりのワークショップの集大成とも言える空間です。

デジタルものづくりのワークショップと聞くと、こどもたちがパソコンに向かって、ひたすら静かにプログラムを入力している姿をイメージしがちですが、このフロアは、とにかく熱気に包まれています。まず、入り口で出迎えてくれるロボットは、まさに未来の象徴です。私たちがこどもの頃、近い未来、ロボットとおしゃべりをしたり、一緒におどったり、こどもたちが簡単に操作したりすることができる日が訪れるだなんて思いもしませんでした。そんな未来が、ワークショップコレクションを通じて手を伸ばせば届くところにありました。

ロボットたちは、こどもだけではなく、おとなも楽しませてくれました。むしろ、デジタルがあたりまえのようにまわりに存在している今のこどもたちにとってはまるで「ロボットはともだち」。驚いた表情を見せていたのは、自然とロボットとコミュニケーションをはかって楽しむこどもたちを見守るパパやママの方でした。

 

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— デジタル系のワークショップ。大切なのは、そのプロセス。

会場中に響き渡る電子音は、こどもたちが電子楽器を使って『ライブ』で鳴らしている音。レゴのようなブロックと電子回路の組み合わせによって、いろいろな音が出て、誰でも簡単に演奏することができるオモシロ機械『littleBitsシンセキット』を使って、こどもたちは一見ただただブロック遊びのように、電子工作を楽しんでいるように見えますが、実は、ブロックと回路をどういう風に組み合わせると、どんな音が出るのかを研究し、視覚と聴覚と触覚をフルに使って、その組み合わせを創作・表現=ライブしているのです。音楽家となって、時に難しい表情で、時に笑顔で、その機械が奏でる偶発的なメロディを楽しんでいます。もし自分がこどもの時に、こんな魔法みたいな楽器があったら、もっと音楽を好きになっていたかもしれないなと、自分のこどもの頃の音楽の授業と、電子楽器で遊ぶこどもたちの姿を重ね合わせて、いまのこどもたちが羨ましくも思えたりします。もしかしたらこの体験がきっかけとなって、未来のミュージシャンが誕生するかもしれない。そんな可能性すらも感じるプログラムです。

 

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その横では MESH というデジタルツールによるワークショップが開催されています。MESH は、さまざまな機能をもつ消しゴムサイズの電子タグ。身の回りのモノやコトと MESH を組み合わせることで簡単にデジタルなものづくりを楽しむことができます。カラフルな4色のMESHには、それぞれ「スイッチ」「LEDライト」「動かす」「デジタル→アナログ」といった機能があり、iPad などのタブレットと連動させて、MESH を取り付けた道具から音を鳴らしたり、光らせたり、動かしたりすることができるのですが、印象的だったのは、MESH やタブレッドなどのデジタル機器の横に、はさみやわりばし、こどもの頃によく遊んだ『モール』など、従来のものづくりのワークショップで使う道具と同じような道具たちが用意されているという点です。切ったり貼ったりというプリミティブな行為とデジタルをうまく組み合わせることで、こどもたちは『頭』だけではなく『手』や『指』を使って、デジタルの感覚を体になじませながら理解していくことができるのです。

 

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デジタルとアナログの融合。LEDとダンボール工作を融合させた『光でつくるダンボールドーム』ワークショップや、エデュケーショナルロボット『Romo』と、昔からある『じゃんけん』を融合させたじゃんけん大会ワークショップ、インタラクティブな写真撮影アプリ『ShigusaParty』と『からだの動き』を融合させたアニメーションワークショップなど、用意されたすべてのデジタル・プログラミング系のワークショップが直感的で、手や足、からだを通じて、こころを動かしています。ねんどを使ったものづくりも、はさみや紙をつかったものづくりも、ダンスも、電子工作も、こどもたちにとってはあまり大きな違いはなく、楽しく、自由なものだと気付かされます。デジタルはあくまで手段やツールであって、どんなツールを使ったワークショップでも、大切なのは、それを使って何を作るか、生み出すか、そしてそのプロセスで何をどういう風に考えるかなのだと感じました。

5階に用意されたハンズオン展示(触れて感じることができる展示のこと)の1つ『INOVATORS’ SUMMER 2015』はまさにデジタルを通じたこどもたちの活動の可能性やプロセスの大切さを紹介した活動の展示です。中高生が6週間でWebサービスやアプリを作り上げるプログラム『イノサマ2015』に、このフロアで遊ぶこどもたちの未来の姿を見ることができました。

 

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5階にあるもう1つのフロアでも『未来』型のワークショップが開催されており、どのワークショップも大行列を成していました。女の子に人気だったのが、光る花を使ったお花畑づくりや、自分だけのオリジナルの光る宝石をつくる『オリジナルレジンLEDづくり』。毎日がちょっと楽しくなる『自分のためのものづくり』をコンセプトに掲げる D.I.Y グループ『乙女電芸部』によるワークショップです。ママと一緒につくった世界に1つだけのアクセサリーは、ダイヤモンドにも劣らない輝きを見せ、こどもたちの宝物になります。そして、特に男の子たちは3Dプリンターを使ったワークショップに夢中。話題の3Dプリンターを前に、『元』男の子だったパパたちも大興奮。ただ、3Dプリンターという道具に頼るのではなく、その仕組みを知るためのプロセスづくりや、その素材を理解するためのプログラムづくりが印象的でした。

フロアの奥ではなにやらダンボールの箱を顔につけてはしゃぐこどもたち。ダンボールでできた、その謎の箱の正体は、なんと バーチャル3D世界を体験できるVR(仮想現実)ゴーグル。ダンボールの中にスマートフォンが埋め込まれていて、アプリを通じて、VRを楽しむことができるという工作です。ここでもアナログとデジタルの融合が!

 

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デジタル・プログラミングへ対する従来の『難しい』『もの静か』なイメージが、このワークショップコレクションを通じて、『簡単』で『楽しい』というイメージに変わっていきます。むしろデジタルとアナログの間には大きな垣根はなく、自由に行き来することで無限の可能性を生み出すのだというプレーヤー側の発見が、このこどもたちのために用意された Making & Coding エリアのもう1つの狙いであり目標だったように思います。

8月29日、この Making & Coding エリアでは『第4回デジタルえほんアワード』の表彰式が行われ、さらに大きな賑わいを見せていました。世界中のこどもたちを魅了する『デジタルえほん』は、『未来』をつくるこどもたちの世界を広げていきます。次回のレポートでは、この国際デジタルえほんフェア2015によるスペシャルプログラムをはじめ、ワークショップコレクション11inシブヤで用意されたさまざまなスペシャルプログラムを1つずつ紹介していきたいと思います。お楽しみに!

つづく

第1話「街が舞台。新たな熱気に包まれた…
2015.11.02 公開
第2話「手を伸ばせば届く『未来』が…
2015.11.16 公開
第3話『未来』をつくるスペシャルプログ…
2015.11.30 公開
最終話「CANVAS から感謝を込めて」
2015.11.30 公開