制作の連鎖『WONDER WORLD』から生まれた
『しろくまのパンツ』『どこどこハート』
これは『WONDER WORLD』という本。木の作品集です。中目黒にある、MIGRATORYというショップがオープンするときに、展覧会を頼まれたんです。それでお店を見に行ったら、そこは50年代からあった木工の工場を縮小してギャラリーとショップにした場所だったんですね。僕はちょうど絵本の展覧会をやった直後だったので、本当は展覧会をやりたくなかったんです。だから、どうせやるならなんかおもしろい形でやりたい、と。それで考えたのが、裏の木工所にちなんだ展覧会。木工所の廃材を使って、作品をいっぱい作ったんです。工場に、たくさん木をもらったのでお礼をしにいこうと思ったんだけれど、せっかくなのでお仕事を頼もうと思って、木を切ってもらったんです。ちょうど作品を作っている時に、東日本大震災があって。だから作品を販売して、それを震災の寄付とかにしたんです。みんなが買ってくれた。売れていくとどんどん作品がいなくなっていって、ものすごく悲しい気持ちになったので、本にして残しました。2000部限定の本です。
2000部限定で作ったんですね。
うん、2000部限定でこの本を作って、販売した。その時の作品に、これがあるんですよ。『しろくまのパンツ』。昔から仲良いブロンズ新社の編集長の若月さんが作品を買ってくれて、この作品で絵本を作ろう!と言ってくださったんです。その後、会うたびに、しろくまのあれはどうなったの?と聞かれて。
催促ですね。
二か月ぐらい経って、本にパンツはかせるのどうですか?って言ったんです。そしたら、「それいい!」みたいな話になって。
そんな突飛なアイディアを!
うん。「布にする?何にする?」って言われて、焦って布にするって言っちゃいましたよ。「わかった、布にしましょうか」と。一週間後に白い布パンツを履いた絵本ができて、生々しいんです。
たしかに、布だったら生々しいですよね。
やっぱり紙ですね…、と変えました。その次に紙でつくられてきたたのをみてこれでいこう!と。中身が何も決まってないまま締切りが三ヶ月後に設定されました。この本どういうものか見てない人もいると思うんで、見てみましょう。パンツを脱がしてから、読む。まず脱がせないと。
脱がせるって・・・。
世界初!パンツを脱がして読む絵本って広告でうたっているんですけど。
キャッチーですね。
これを今日は、ざっと説明しようか。『しろくまのパンツ』。
(『しろくまのパンツ』読み聞かせ)
結局、最初に戻ると、履いてるんです。原画もちゃんと履かせてるんです。10人中1人くらいが履いていることに気がつくぐらいの絵にしています。僕がお付き合いしている出版社は、みんな気持ちよく、みんなで楽しくつくっています。「パンツをはかせるとか何言ってんだ」と言われることもなく、本当に楽しく遊びながら作った本です。これ赤いパンツをなくしても、80円切手を同封して、パンツくださいっていうと、替えのパンツが送られてくるんです。これは僕の発想じゃないんですけど。出版社の発想なんですよ。
本の最後をみると、こっそり書いてありますよね。遊び心満載で、感動します。
今までこんなのないですよね。それを提案してくれた時には、本当に感激しました。この作品のことをそこまで考えてくれているんだって。。
子どもの夢を壊さないですね。私は、小さな子どもがいるんですけど、すごい乱暴者なのに、これはすっごく大事にしていた。どんなものも全部崩壊していくのに、これだけは全く切れない。そのくらい赤いパンツが大事なんですよ。
パンツ大好き。
パンツ大好き。それちょっとやばいですね。
これは五ヶ国語ぐらいで出版されてます。これはアメリカ版。パンツをいろんな国の国旗みたいにしたらおもしろいと思って提案したんですけど、だめっていわれました。
何でですか?
さすがにそれはまだだめって。笑
おもしろそうなのに。そうしたら、世界中のものを集める楽しみもできそうですけど。
そうですね。韓国と台湾でも出てます。子どもが抱っこしていたらかわいいな、飾ってあったらかわいいなっていう本として作って、あとで内容を考えた絵本ですね。こんなことできるんだなって自分で驚きました。
絵本というとストーリーを伝えるイメージもありますが、それだけじゃない絵本のあり方にチャレンジしているんですね。
そうですね。また、これからもこういう作り方するかもしれない。
これはすごいヒットしましたよね。
そうですね。そのあと出版したのがブロンズ新社の『どこどこハート』。パラパラめくっていくと、いろいろなところにハートが隠れてる。なんてことないんだけど。
楽しいですよ、こういうの。
『どこどこハート』。これは人が人にプレゼントする本としてつくったんです。メッセージカードをプレゼントするように、贈り物に絵本をつけてプレゼントするんです。メッセージカードの延長線上にあるような本づくりができないかなと思って作りました。
ラブレーターみたいなイメージですね。
そうですね。だれか特別な人にあげる本を作れないかな?という思いで作ったんですけど、きっとそうやって、やっている人いないです。