CANVAS

こどもの“つくる”を応援する キャンバスマガジン

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フィリッポ・ヤコブ 

プリモトイズ CEO&Founder

3歳から遊べるプログラミング脳を育てる玩具、キュベットの開発者。テトリス大会チャンピオンという経歴も持つ。
デザイナーとして働いた後、息子に楽しくプログラミングを学ばせたいとの思いから、クラウドファンディングのプラットフォームであるKickstarterを利用し、2013年にプリモ・トイズを設立。2017年1月、ヨーロッパを牽引する社会起業家の30名の一人として、フォーブス誌で選出。プリモ・トイズはヨーロッパに本社、4カ国に運営機能を設け、90カ国以上に何千セットものキュベットを送り出すまでに成長。現在29歳。

関連サイト

キュベット 公式サイト

https://www.primotoys.jp/

未来の道具箱 #01

いつも使うクレヨンやはさみみたいに、いろいろなデジタル・テクノロジーを道具として使えたら、みんなはどんなものをつくったり表現したりするだろう?
「未来の道具箱」では、子どもたちのための、新しいものづくりや表現を広げるさまざまなツールについて、関係者の方へのインタビューやツールを使ったワークショップのレポートなどを通して紹介していきます。

第2話では、2月13日(月)、都内で開催されたメディアイベント(主催:プリモトイズ販売総代理店キャンドルウィック株式会社)にて行われた、プリモトイズのファウンダー兼CEOのフィリッポ・ヤコブ氏とCANVAS理事長の石戸によるトークイベントの内容をハイライトでお届けいたします。キュベットは、いったいどんな思いのもとに開発されたのでしょうか?

キュベットがこれまでのプログラミング玩具やツールと違う点はどんなところですか?

大きく違うのは、デジタル画面を一切使わないで遊べるところです。このような仕様にした一番の理由は、3歳から6歳の子どもに、年齢に合った自然な遊びを与えたかったからです。私たちは手の感覚を使った遊びが非常にいいと考えていて、手を使った遊びを大切にするモンテッソーリの教育理念に大いに賛同しています。冷たいデジタル画面に触れたり、音だけで自分の周りの世界を経験したりするよりも、いろいろな要素をもって体験する方が、包括的で、豊かで、強く印象に残るものになると考えています。キュベットは実はものすごくハイテクなおもちゃなのですが、そのハイテクな部分を手触りのよい木材でカバーすることにより、その遊びが子どもにとって魔法のように感じられるのです。特に自分が置いたブロックが、ロボットがいつ、どのように動くかを指示しているんだと気づいたときの驚きと発見は、子どもにものすごい力を与えるでしょう。

手触りや使い心地の良さも子どもの体験にとって大切なこと

現代の生活において当たり前なものとなっているデジタル画面を、この玩具に導入することを何度も検討しましたが、試してみる度に、この早期教育の段階においてはデジタル画面を使わないほうがいいという考えにいたってしまうのです。デジタル画面を使わないということは、子どもがキュベットを通して体験すること1つ1つを分けることなく、全てに社会性を持たせ、生き生きとさせるのです。プレイセットにはコントロールパネル、ブロック、地図、ロボットが含まれ、子どもたちは複数のものを通して遊びの中で考えを深め、集中することができます。デジタル画面を使えば、キュベットがどのように使われたかを記録することはできますが、ユーザーの皆様から情報を集めることは私たちがやりたいことではないですし、それぞれ独立したデバイスを取り入れることは、幼児教育という点ではいい妥協策だと考えています。

キュベットを通してどのような体験を提供したいと思っていますか?

これまで90カ国以上で早期プログラミング教育のカリキュラムに新しいプログラムを提唱する素晴らしい教育者の方々にお会いし、サポートもしてきましたが、教育全体はそれ程スピーディに変化していきません。一方で、お父さん、お母さんというのは子どもの教育に対する投資に関してとてもスピーディに決断ができます。2016年に私たちが行ったKickstarter・キャンペーン以降、お客様の実に80%以上の方が、子どものプログラミング教育を自分たちの手でやろうとしているお父さんお母さんだったことが分かったのです。その大半はプログラミングを学んできた人ではなかったのですが、プログラミングが重要な関心事だったことは明らかです。多くの親は子どもと一緒の時間を過ごしたいと願っていますが、どのようにしたらいいのかわからない人も多いのです。ここに、コンピューターを使った考え方を幼い頃から取り入れる機会を増やすチャンスがあります。

プログラミングを大人にとっても親しみやすいものに

私たちはテクノロジー、教育、玩具を提供するだけの会社ではなく、遊びを通じて子どもと親をつなぐ「絆を育む」会社になれるのです。私たちの製品のシンプルさは、お父さんお母さんが新しい技術を習得する負担なく、子どもと有意義な時間を過ごすことができるようにしたのです。大人たちは童心にかえり、子どもたちは自分の周りの世界を違った観点から見るようになってきています。

キュベットは3歳のお子さんから遊べますね。でも、日本にはそんなに小さいうちからプログラミングを学ぶ必要はないと考える人がいると思いますが、この意見についてどう思われますか?

プログラミングはとても大切だと思います。でも、子どもに子どもらしくさせてあげることも同じく大切だと考えています。想像力を働かせて、体を動かして遊び、デジタル画面の中の世界に没頭させないこと。この二つの世界を最大限に活かす解決策として私たちがやっていることが、デジタル画面を使わずにプログラミングをするということです。子どもたちは物語を語り、話し合い、キュベットを使って手を使った遊びを実践していきます。スティーブ・ジョブスも、「人々はみな、コンピューターでのプログラミングを学ぶべきである。プログラミングは考え方を教えてくれるのだから。」と言っています。
プログラミングを学ぶことの最も重要な点は、問題解決の方法を学ぶことにあると思います。大きな問題を細分化し、論理的に解決していく。これがキュベットを通して学べることなのです。このスキルは人生のどんな場面でも生かされるものです。プログラミングが重要ではないと考えているご両親を偏見の目で見たり、悪く思ったりはしませんが、問題解決の力は必要ないと断言する人はいませんよね?実は、プログラミングとは問題解決そのものなのです。結局、プログラミングとは、コンピューターの言語であり、就学前から読み書きそろばんと共に学ぶべきことなのです。

プログラミングで「考え方」を学ぶ

クラウドファンディングで160万ドルを集め、新たな記録を作りましたが、この成功の要因はなんだと思いますか?

プログラミングは、今後私たちの子どもたちがどこで暮らしていようとも、出身がどこであろうとも必ず学ばなければならないことです。これはグローバルなトレンドであり、私たちが始めたことではありません。私たちはたまたま良いタイミングで、多くの方々に理解し、評価していただけるよい製品を創ることができただけです。私たちが今生きている時代は、コンピューターやテクノロジーがこれまでになく重要になり、毎日の生活に影響を与える時代です。私たちは大きなミッションの中のごく一部を担っただけですが、世界中の多くの方々に共感していただくことができました。私たちが成功したのは、ただ時代に沿っていただけですよ。

つづく

第1話:初めてのコーディングツール 「キュベット」
2017.04.06 公開
第2話:子どもたちがプログラミングを学ぶということ
2017.04.17 公開
第3話:プログラミング教育の今そしてこれから
2017.05.01 公開
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フィリッポ・ヤコブ 

プリモトイズ CEO&Founder

3歳から遊べるプログラミング脳を育てる玩具、キュベットの開発者。テトリス大会チャンピオンという経歴も持つ。
デザイナーとして働いた後、息子に楽しくプログラミングを学ばせたいとの思いから、クラウドファンディングのプラットフォームであるKickstarterを利用し、2013年にプリモ・トイズを設立。2017年1月、ヨーロッパを牽引する社会起業家の30名の一人として、フォーブス誌で選出。プリモ・トイズはヨーロッパに本社、4カ国に運営機能を設け、90カ国以上に何千セットものキュベットを送り出すまでに成長。現在29歳。

関連サイト

キュベット 公式サイト

https://www.primotoys.jp/