繰り返しになるが、Society5.0時代のSTEM教育の一番の特徴は「情報技術」である。今後、日本においてSTEM教育を推進するに当たり一番の課題はデジタル教育の環境整備であると言わざるを得ない。日本の学校情報化は途上国のままである。小学校のコンピュータは5.6人に一台。10年前に7人に一台だったが、一人一台を目指すといいながら進まない。アメリカは10年前に3人に一台、日本ほど遅れている国は知らない。
学校の中でも外でもコンピュータやインターネットを使う生徒の割合は、日本はOECD最低。学校でコンピュータを使ってグループワークに取組む生徒はノルウェー82%、OECD平均45%、日本7.4%。学校の課題のためにネットを使う生徒はオランダ94%、平均86%、日本44%。
今後、STEM教育を推進するに当たってすべきことは早急なデジタル教育の環境整備であると言わざるを得ないだろう。
また、諸外国が力強く次世代の教育システムを議論・導入する中で、日本も前述の教育インフラの整備整備とあわせて先端教育の開発にも尽力すべきであろう。AI、IoT、ブロックチェーン等、Society5.0を代表する技術は、教科、試験、学校など、学びの内容・環境・評価を問い直す変化をもたらす可能性がある。
教科面ではAIが教科を横断する超個別学習を実現する。そのためのカリキュラム再編成も求められる。それは検定や学習指導要領の内容や存在を問うことになり得る。
また、ブロックチェーンで学習履歴を全て蓄積することで、試験をする必要がなくなる。入試のあり方を問うことになる。
そうした変化により、学年や学校など教育機関の枠を超える学習環境をデザインすることができるようになる。学校制度のあり方自体も問うことになり得る。
そこで、超教科・超試験・超学校を「実装」する産学連携プラットフォームを構築することを目指し、昨年、「超教育協会」を設立した。国内外の幼児教育、初等中等教育、大学、生涯学習を横断する教育機関と、民間企業の連合体により、世界最先端の学びの場を創出してはどうか。
STEM教育が求める学習スタイルは、主体的学習の実現へとつながる。そして、それは生涯にわたり学び続ける姿勢へとつながる。それこそがSociety5.0時代に求められる「変化に対応する力」である。プログラミング教育もSTEM教育も、諸外国と比較して日本は遅れをとっている。Society5.0を迎えるにあたり、改めて、世界に先立ち教育をリデザインする必要があるのではないか。そしてそれは、全ての学習者を主体としたデザインであり、従来の学校の枠を取り払った学びの場「超教育」を構想する試みであると考えている。