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CANVAS REPORT #03 STEM/STEAM教育とは Vol.2 基礎教養としてのSTEMリテラシー

近年、STEM教育を推進する動きが世界中で加速している。科学とは、自然現象の法則を見つける行為。数学は、その法則を体系化し説明するために使う言語。工学は、数学や科学を基礎とし、有用な物や環境などを設計すること。技術は自然界にない有用なものを作り出す営み。技術と工学が一緒に語られるが、工学はツールを設計すること、つまりプロセスを指し、技術は工学によってつくられた結果を意味する。STEMという言葉は、アメリカ国立科学財団が用いたSMETであるが、SMUT(「汚れ」を意味する言葉)を連想させるため後にSTEMとなったが、SMETの順番の方が分かりやすいため、この順番で説明をした。

STEM教育を理数系教育と捉えるならば、産業革命以降、労働人材確保と全ての国民の基礎リテラシーとして、常に重視されていた教育であり、いまに始まったことではない。1957年、ソビエト連邦による人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功したことは、アメリカをはじめとする西側諸国に大きな衝撃を与えた。そのスプートニク・ショック以降、アメリカは科学技術教育に力を注ぐこととなる。日本もその影響を受け、1971年の学習指導要領改訂においては理数教育の充実が図られた。世界のSTEM 教育を先導するアメリカでは、2007年に米国競争力法が制定され、STEM教育拡充が掲げられたことがきっかけとなり、推進されることとなる。それは、スプートニク・ショック後に展開された科学教育以上の大改革として、国家的な教育戦略としての展開であるとされている(Bybee,2013)。

いま改めてSTEM教育に大きな注目が集まっている理由は第3次産業革命による「情報化」が定着したことと、第4次産業革命による「AI・IoT化」が始まったこと、その相乗であろう。情報化社会を生き抜く21世紀型スキルが強く求められることに加え、身の回り全てがAIやIoTで運用・制御される世の中を展望して、誰もが基礎教養としてSTEMリテラシーを備えるべき必要性が格段に高まった。

アメリカが、2015年STEM教育法成立に当たりSTEM教育の定義を拡張し、コンピュータサイエンスを含めることを明示したこともそれを象徴していると言える。世界中でプログラミング教育重視の運動が起きた時期とSTEM教育ムーブメントの時期も一致していると言えるであろう。また、アメリカにおいて21世紀型スキルが広まった時期とSTEM教育ムーブメントの時期は一致しており、STEM教育改革の根底に21世紀型スキルが全米に広がり、その流れをもとに科学教育改革の内容について議論され推進されていったという見方もある(熊野,2017)。

つまり、STEM教育とは、情報化社会・知識基盤社会を生き抜く21世紀型スキルを育む学びと言える。そのため、イノベーションを創出するトップ人材、全産業のSTEM化に対応できるミドル人材、そして全国民のSTEMリテラシーの強化の総合的な施策が重要となる。  トップ層の対応としては、経済発展を支え国際競争力を発揮するための革新的なビジネスを創出するイノベーターが求められる。そのためには、経営者層のリテラシー強化、世界最先端の教育・研究機関整備、起業家創出等が必要とされる。

ミドル層の充実により全産業のSTEM化を強化するためには、リカレント教育、学び直しとしてのリテラシー強化、先端的STEM教育学部の強化が必要とされる。

Society5.0時代を迎えるに当たり、全ての国民がSTEMの知識・スキルを身につけ、社会的課題に取り組む基礎教養としてのリテラシー強化としては、幼稚園小中高校段階からの教育教育強化や大学での全学的なSTEM分野における教育強化、またシニアなども含めた地域でのSTEM教育学習の場の強化が必要とされる。

全ての国民が「変化に対応する力」を得るためのSTEM教育なのである。

執筆者:石戸奈々子

つづく

STEM/STEAM教育とは Vol.1 社会の変化
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