絵本から広がる世界『やさいさん』『くだものさん』
じゃあ『やさいさん』読みましょうか。みなさんにも協力していただいて。“すっぽーん”のところをみんなで言いますので、協力していただいていいですか。あと、何が出るかを、みんなで当てますので。せーので何か当てて、次のせーのですっぽーんって引き抜きますから。
ありがとうございました。この絵本は、子どもからアイディアをもらいました。うちの子が、2歳くらいの時に、財布のカードを抜くのが好きだったんです。財布を置いておくとカードを抜いてケラケラ笑っている。抜くのって楽しいんだろうなって思って。ちょうど手作りおもちゃの工作の連載をしていた時だったんです。だから、クッキーの箱を茶色く塗って畑にして、スリットをいれて、野菜の絵をかいたカードを土の中に植えて、葉っぱだけ見せて、すっぽーんって引き抜けるおもちゃみたいなのを作ったんです。それと同時に、学研からフリップブック本の依頼がきたんです。その時は、結びつかなかったんですけど、半年後ぐらいにビビビッときました。でも、思いついた時には、野菜を引っこ抜く本は、すでに世の中にあると思った。絵本は、今までいろんな人が知恵を絞ってつくってきたわけですから。でも、色々調べてなかった。『やさいさん』というタイトルもなかった。やばい早くやらなきゃって思って。そこからはもう、やるか、やられるかですからね。
でも依頼が来て、半年間は放置したんですよね(笑)。
うん。いいアイデアが出てこなかった。そうしたら、学研が二冊同時に出したいっていうわけ。狭い書店の平積みは、目立たなきゃいけない。だから、もう一冊対になるようなものを作らなきゃいけない、と。そこで、『くだものさん』も作りました。これは、果物が下にポロリと落ちる。やさいや果物に顔をつけてるだけなんで、あえて顔を感じるくらいの要素を残して作りました。なかなかうまくできたと思ってます。『くだものさん』は果物界のオールスターメンバーがいるわけですよ。みかん、ももとか、ぶどうとか。『やさいさん』は根菜ばかりなので。
根菜は地味ですよね。
いわゆるそのトマトとかピーマンとか、野菜のオールスターがいないわけ。野菜のスターがいなくて根菜のみだから、出たときはどうかなって思ったのですが、こっちの方が断然おもしろいみたいですね。
どちらの方が魅力的かって、どこらへんにポイントがあるのですかね?
すぐにわかるかどうかだよね。くだものは、どんだけ隠そうが、わかる。
野菜の方は、今日ほとんどみんなハズレましたからね。正解率、半分切ってる。
ですね。葉っぱの形を忠実に描こうと思って、徹底してやりました。僕も野菜の葉っぱに興味があるわけではないので、勉強して。
興味がないけど、つくること多いですね(笑)。
浅いんです、僕は。大人になるまで野菜を味わって楽しむ人生でなかった。好き嫌いが二十歳でもものすごく多かったんです。生魚とか野菜とかものすごい嫌いなものが多くて。お酒飲めるようになってから、食わず嫌いが多いと喜びがすごいですよ。いろんな人に勧めてます。
え、どういうこと?
子どものころから、食べていると感動がないんです。二十歳になってから、お酒たしなみながら食べられるようになると「うわぁ~っ」と感動が一個一個違うから。
なるほどね。人生が豊かになっていくのを感じられるんですね。
世の中、経験したことがないことがほとんどなので、僕は絵本を通して一個ずつ楽しんでいます。知らなかった星座を楽しんだり、いままで気にしたことのない野菜の葉っぱを見て、こんな形してるんだ、こんな色してるんだって感動しながら作ったり。でも、作り終わったらまた興味がなくなったり。自分の絵本を通して、一つずつ知らなかったことを頭に入れて楽しむことが出来ているので、絵本作りはおもしろいです。