これは、2014年に、東北芸術工科大学が行なった山形ビエンナーレに参加した時の写真です。文翔館(旧県庁舎及び県会議事堂)という重要文化財に指定されている古い建物があるのですが、その中庭にGoma小屋というのを建てました。
建てたんですか?
建てた、建てた。小屋のデザインから全部やりました。上の木の部分がザルのイメージです。
テーマを保存食にしました。一年ぐらい前から、20人くらいの市民の方と一緒に山形の伝統食や保存食について研究したり考えたりするラボを開催して。そこで考えたことをヒントにしてこの小屋が生まれました。「干す」「漬ける」「もち」をテーマに装飾やしかけをたくさん作りました。天井からは干し野菜が吊るされているんです。東北の農家の軒先でよく野菜がたくさん吊るされている風景からヒントを得たのですが、ここではGomaっぽくポップな干し野菜にしました。
色合いがポップですね。
そうですね。かわいくしました。ラボのみなさんと一緒に、山形の果物で果実酢も作り、それも小屋内に展示しました。最初は小屋ではなくカフェを作る目的もあったのですが、企画が進むにつれ重要文化財の中庭なので火を使うカフェは難しいことが判明したんです。で、途中で方向転換をして、インスタレーション的に小屋を作って、カフェではないけど、みんなの寄り合い場所をつくり、そこでどんなアクションが起きるかを見たいなと思いました。
囲炉裏を作りたくて、樽を真っ二つに切って、ホットプレートを組み込んで貰いました。勝手なイメージですが、東北の人が、雪深い中で、囲炉裏を囲んで集まってお喋りをしているイメージがあって、それを再現したかったんです。火を使ってはいけない施設なんで、ホットプレートを使って、そこでお団子を焼くことにしました。その場で知らない人同士が、丸くなって団子を焼くんです。団子を焼いてその場で食べるというインスタレーションです。
必ず人との交流が入ってくるんですね。
アーティストというよりはいつものGomaらしい視点で、身近なものを作りたいと思って。Gomaができることは、食を中心にコミュニケーションをつくることだと考えたんです。体験できる、ということも大事にしました。展示では、干し野菜の隣にロープをぶら下げ、人がつかまれるような場所なんかも作ったりしました。大人もこどもも、干し野菜の気分になれるように(笑)。
かわいい。
干されちゃうんです。
山形で私が感動したものの1つがおもちでした。おもちがすごく美味しいんです。東京で食べるおもちは焼きもちですが、山形で食べたおもちは、ふわふわのトロトロなんです。
お米が美味しいので。
だからおもちもテーマに入れたいと思って、お団子ともち部屋を作りました。小屋の中に小さな密室を作って、そこをビーズクッションで埋めたんです。そこに入ると、クッションの中に埋もれていくんです。もちに包まれて、みんなおもちになってるよ!って言いながらみんな埋もれていきました。
背面にはおもちの名前が書いてあるんです。納豆もち、いそべもちとか、ずんだもち。
こどもたちには遊び場所のように思えたみたいで、ずっとこの小屋にいましたね(笑)。
普通のアートビエンナーレと違って、暮らしを前面に出したテーマで開催したイベントでした。無料だったので、公園感覚で毎日遊びに来る子もいました。アートのイベントというよりも、市民の方との距離が近いイベントでしたね。
常設で置かせてくれたら面白いのに。
小屋は解体されたらしいです。でも、果実酢は、ラボメンバーの皆さんがその後再び集って飲んだらしいです。