会場のみなさんからもご質問はありますか?
アレルギーを持ってらっしゃるお子さんもいらっしゃると思うのですが、何か注意していることはありますか?
みんな同じ物を作るのが目的ではなく、コンセプトがありながらも、その中でそれぞれ自分が作りたいものを作るのがワークショップなので、「この材料で、このテーマで、あなたなら何を作る?」とすれば、とくに問題にはならないと思います。アレルギーのこども達も自分で食べられないものは分かっているので、それ以外の材料で作ればいいので。
「これを作ろう」という最後のゴールが一緒になっていて、皆同じものが出来上がるワークショップもありますよね。でも、私達のワークショップはそうではなく、素材を与えて、やり方を教えたら、後は自由に作るでいいと思っています。自分たちで工夫してやるということが大切だから、素材がちょっとずつ違ったとしても、問題ないですし。逆にこどもはあまり気にしていないようにみえます。
夜店のりんごアメなんて、すごい食紅じゃないですか。でも、あの赤い色がなんだか心沸き立たつ(笑)。毎日食べたらよくないかもしれないけど、心の高揚感や特別感をこどもの頃に味わうのは、とくに悪い事じゃないと思っているんです。
昔、テレビのトーク番組に出た時に、「食べ物を使って遊んでいる」と高齢のおじいさまに注意のメールを頂いたことがあるんです。
私達もまったく同じ事を言われたことがあります。食べ物を粗末にするな、と。
「戦争に行った私としては抵抗があると。皆さんどのようにお考えか?」と。とても勉強になりましたね。ふだん活動しているとまわりの人でそういったことを進言してくれる方はいなかったので。なので「毎日そういうことをしてほしいと思っているわけではなく、いま食べ物に興味がないこどもたちがたくさんいる中で、食べることとか作ることは楽しいんだと思うきっかけになりたいんです」と答えました。最後は、わかりましたといういいメールを頂けたのでよかったです。
真摯に向き合って答えたからですかね。
そうですね、いろいろな意見がありますから、そういった意見も大事だとは思います。
最近は、食育ブームもあり、こどもたちが食の教育を受ける機会も増えていると思うんですよね。では、食育って何か?と考えると、もちろん1つは栄養バランスなどを知るということもあるかと思いますけど、同時に1人で夕飯を食べているこどもも増えていると言われる中で、食を介してコミュニケーションが生まれることを知ってもらうこともとても大事ですよね。前回のamuのトークイベントでは保育園・幼稚園の建築を手がけていらっしゃる方をゲストでお呼びしたんですが、食育の観点から、給食を作っている姿をガラス張りにして見せたり、配膳をこどもたちができるような食堂を作ったりしていました。「食べる」だけではなく、食べる前後、食べる過程も含めて「食べる」という行ために興味を持ってもらう、もしくは、食べる行ためを通じて、いろいろな事を考えていく機会があるというのはいいなと思いました。アレルギーの話も、まったく同感で、素材を提供して、あとは好きも嫌いも、食べられるも食べられないも個性と捉えて、それぞれが自由に自発的に素材を選んで好きな表現をするということが大事かなと思います。その一方で、病気などによりなんらかの制約条件があって、普段はワークショップなどに参加できないこどもたちに対して提供できるワークショップは考えていきたいですけどね。
そうですね、いろいろなところから声をかけていただけるので、それが考えるきっかけになります。
大人とこどもの距離間はどうとっていますか?お母さんやお父さんがどこまで介入するべきか、どこまでファシリテーションするべきか。その辺りをどういう風に考えていますか?
ワークショップにもよります。もちろん、こどもが主体になってやる事が大切ですが、親御さんが隣にいることの良さもあるなと思います。普段、親御さんはこどもと一緒に作る経験ってあまりないと思うのです。親もこどもも一緒になって作るというのはいい思い出に残るなと思います。ワークショップでは「やっちゃ駄目」というのがないので、「こうしたほうがかわいいんじゃない?」といった自分の意見があったとしても、親も止めることはできないですしね。
ワークショップを見ていると、親子によってその関わり方がいろいろですよね。こどもがどんどん進めている場合もあるし、いつもお母さんが主体でやっているんだなぁと感じる場合もあるし。それぞれの親子の楽しみ方があると思うのですが、あまり親がやりすぎていると止める場合もあります。
スタートが遅い子もいるので。どういうものを作りたいかは頭の中であるんだけど、まとまるまでに時間がかかる子は、少し待ってあげるようにアドバイスします。「どんなのをやりたいのかな?」と私達が、お子さんの方に声がけしてみると、親も「あっそうだった」と手を引っ込めるケースもあります。ぐるぐる見て回りながら、親子の関係性を見ながら、声をかけるようにしています。できるだけ、こどもたちの考えを形にしてあげて欲しいというのは、最初に話をします。
私達は始めに、こういう風に作るよ!というのを、実際に手を動かして作って見せて、後はみんな自分の机に戻るので、その後は、ほとんど口出しはしないですね。こどもたちは夢中になっているので。
こうやると面白いよ!という技術面を教えてあげるくらいですね。だから、ワークショップでは、先生ではなくGomaちゃんと呼んでもらいます。一緒に作ろうというスタンスでいるので、教えるのではなく寄り添っています。こどもと親が、1つずつ作る場合だと、お互いを見合いながら「お母さんやるな」みたいな関係になっている時もありますね。こどもの方が爆発的に面白かったりして、こどもが終わって飽きているのに、親がずっと取り組んでいることもあります。
こどもをいい意味でも、悪い意味でも、特別視しすぎないようにしています。こどもだからこうしてあげなきゃとか、こどもだから手を出しちゃいけないとかも決めないで、こどもも大人も楽しんで欲しいと思って取り組んでいるだけです。ただ、親子の関係が、家に帰った後に「もう1個ビン作ろうよ」となってくれるとうれしいので、こどもの世界だけのものづくりよりかは、親も巻き込んでいます。それぞれの家庭で「一緒に何かを作る」という活動が続いていくといいなと思っています。
年齢によってできることも違うと思うのですが、ワークショップでは年による違いはありますか?
私達のワークショップでは、刃物を使う時など年齢によって変わることもありますが、殆どが小さくても参加できる状態になっていきます。年齢で違うことがあるとすると、扱える物が違ってくる、道具が変わってくるだけだと思うのです。手の大きさや手の動きは、小さい子と大きな子では違いますよね。小さくても、隣でサポートしてあげると、自分も一緒にやっている気持ちになっている子も多いです。でもこどもたちは、不器用でも、不恰好でも自分でやりたいという気持ちがあるので、できるだけ自分でやらせるようにしています。
小さいこどもは、見た物を直ぐに“やりたい”と手を出しますね。大きな子はじっくり考えてからやる子も多くなってくる 。
やりたい気持ちは、年齢に関わらず変わらないんですよ。どれだけの事が自分の手でできるかという個人差があるだけで。とにかくやらせてあげる事が一番で、出来る、出来ないはどっちでもいいのかな、と思います。その子にできるだけの体験をさせてあげることが大事です。その出来た物が、良かろうが悪かろうが、その子が作ったものなら、満足なんです。
もし、3才~15才までが参加するワークショップの企画をするとしたら、みんなで同じ大きな物を作る、というのはいいかなと思います。