園舎の事例紹介はここで終わりにして、考え方の話をしたいと思います。僕たちが大事にしていることは「怪我は成長のもと」ということです。「失敗は成功のもと」と同じように、「怪我は成長のもと」です。「危ない」というキーワードで少し写真をみていきます。
下の写真は横浜のある保育園の写真です。3mぐらいのボルタリングボードがあり、4歳か5歳児の子どもたちが、命綱もなしに、裸足と素手で登って行くんです。下に置いてあるのは、厚さ10cm~15cmほどのマットだけです。この保育園の園長先生は「子どもが自分の責任で、自分が行けると判断したら行きなさい。行けないと思ったら、行くのを止めなさい」という教え方をされています。実際は、殆ど怪我がないそうです。同じように鋸を使って竹を切っていたり、先生方と一緒に泥遊びをしていたりします。昨今の都市部の園舎ではなかなか見ることができないシーンです。ロープ一本だけで石垣の上に登った後は、やはりロープで降りるわけです。登った後は、自分の責任で降りなさい、ということです。隣の木が2階を超えているので、2m以上はあると思います。その木にはツリーハウスの土台がありますが、大人が登ってもちょっと足がすくむぐらいの高さです。それも子どもの判断で登っていきます。目の前で、何人かの子どもが登っていきました。危険と判断力を培うことを大事にしている園でした。
次の写真は、デンマークの企業内保育園です。僕は、この園の環境が好きです。木造のバラック小屋のような園舎で、ちょっと入り組んだ道に、いろいろな木や草花が生えていて、子どもが隠れる事が出来る場所がいっぱいあります。ちょっと茂みに入って行けば、虫や花に出会うでしょうし、発見がいっぱいある環境です。子どもたちにとって、こういう園は楽しいだろうなと感じました。これはデンマークの園です。木のまわりにあるフェンスが、ささくれだらけになっています。子どもが怪我をしたらどうするんだという話になりがちですが、園長先生は「それで怪我をしても、次は怪我をしなくなる」という考え方をされていました。
次は、アメリカはオレゴンのモンテッソーリ系幼稚園の写真です。どうやって登るのだろう、登ったあとどうするのだろうという環境が点在していました。僕らのアメリカのイメージは、訴訟社会で、リスクに対して徹底的にマネージメントされているイメージでした。しかし、ここはその逆だったので驚きました。入園する前に親がクレームを申し立てしないように契約書を交わしている事も大きいようですが、子どもたちに良い環境を用意したいという園長先生の強い思いで、実現しているそうです。
こちらの浜松の幼稚園等でも、ちょっとずつ危ない仕掛けを、園に散りばめています。このようなひさしを支える柱も、子どもが登り始めたりします。これが登れるようになると、さらに太いものを登り始めます。この子は、手がまわってないのに、簡単に登っていくんです。さらにすごいのは、下で3人ぐらいの子どもたちが並んで待ってるんです。子どもって大人が知らない沢山の可能性もっているんだなと思います。