事例紹介:稲城市 城山保育園南山
稲城は、まだ里山が残っていた地域なのですが、里山を切り崩した大規模開発がありました。マンションや小学校もでき、沢山の人が移住してくることが予想されるため、保育園も必要だと言うことになりました。
ここでのテーマは、やはり里山を切り崩してしまったので、子どもたちが里山でできたことをできるだけ体験できるようにする、ということにしました。建築は、法規上の規制があるため、山小屋のようなものを作るわけにはいかなかいのですが、「物の素材」をできるだけ子どもたちに伝えたいと考えました。例えば、木は腐っていくものであり、鉄は錆びていくものだということです。この外壁は、本当はセメントの上に塗装するのですが、あえて塗装しませんでした。セメントのザラザラ感、ちょっと粉をふいてくる感じを子どもたちに体験させたかったからです。植栽も、ガーデニングのプロの方とコラボレーションして、四季のあるものをテーマにしました。遊具も、出来合いの遊具を避け、木で作りました。これもそのうち痛んで、腐っていくだろう…という設計です。サッカーゴールも、木で枠をつくり、いずれ痛んでいきます。また、園庭には、子どもがすぐに水遊びできるような場所もつくりました。ダイニングルームは、両サイドの窓をあけると、風が通り、その風に乗って、周りに植えているハーブ、ローズマリーの香りがスーっと抜けるようにしました。子どもたちの食欲を誘う工夫です。食の空間で、食と直結するものを子どもたちが目に触れる場所に植えたいと思いました。そして、なにより香りが嗅覚をしっかり刺激してあげることに取り組んだ事例です。
事例紹介:宮古島 はなぞのこどもえん
宮古島は、日本で最大風速の記録を持っている台風のメッカの場所です。関東の建築事務所としては、本来はなかなか取り組まない気候的特徴をもっているところでした。オーナーが大変情熱を持っている方で、子どもたちに意味のあるものを作りたいと、熱い思いをぶつけてきました。僕らの事務所に沖縄出身の設計士がいて、幸い地域的な特徴を把握していることもあり、地域的特長をもっている場所でありながら設計させていただいた事例ですね。台風や風が強い場所ですと、建築的には普通は閉じざるを得ないのです。しかし、子どもたちには解放してあげたい。一年中台風がきているわけではないので、台風がきていないときに、どうやって沖縄の素晴らしい自然と子どもたちが向き合い、感じられるかということをテーマにしました。
結果的には、写真のようにすごい解放しちゃいました。約80m程の直線がとれるんですが、全部開けると風が吹き抜けるんです。これが大事だと思うのです。この吹きぬける空間が、実現したことが嬉しかったです。台風の時には、アメリカのハリケーンファブリックという強いネットを使い、閉めることができるようにしました。台風が来ることは、天気予報なりで分かりますから、若干手間ですが、オーナーが前日にネットを張り、翌日外す作業をします。年間に台風が来るのは僅かですから、その他の日は子どもたちにとって解放的空間にしたいと思いました。
この「はなぞのこどもえん」は、僕が携わってきた中で特に素敵だなと思っています。それは、建築的な話だけではありません。世界的にみても園舎だけなら、建築的にもっと面白いものがあります。でも、僕が思う素晴らしい保育園・幼稚園を挙げるとすると、それは建築と運営の仕方、いわゆるハードとソフトの連携がしっかりとれている園だと思います。そういう観点から、この「はなぞのこどもえん」は、園長のスキルが本当に素晴らしいです。子どもたちはもちろん、保護者の方々も、どんどん話しかけてくれます。話題も家族のことだったりするんです。お父さんはなんだとか、お母さんはこうだとか。園長をはじめ職員と保護者の方たちの距離間が絶妙だと思いました。子どもたちの笑顔が素晴らしく、コミュニケーション能力がとても高い。子どもの姿が本当に微笑ましい子ども園でした。宮古島自体も観光地として素晴らしいところですから、もし旅行に行ったら、ちょっと立ち寄ってください。
事例紹介:厚木のぞみ幼稚園
最近完成した事例ですが、事務所の歴史の中で、最初に建てた園舎の改修でした。43年ぶりに2度目の設計をしました。