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こどもの“つくる”を応援する キャンバスマガジン

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「デジタルえほん」の今とこれから#02

21世紀を生きるこどもたちのために必要な新しいコミュニケーションや表現を生みだす、こどもたちのための新しい遊びと学びの道具「デジタルえほん」。
「デジタルえほんの今とこれから」では、デジタルえほんクリエイターをはじめとした、「デジタルえほん」にかかわるおとなたちへのインタビューやレポートを通じて、「デジタルえほん」とこどもたちの今とこれからをご紹介します。

日本では漠然とした不安から、新しいテクノロジーと青少年の関係が社会問題になったりするのですが、カナダではどうですか?

本当ですか?てっきり日本はテクノロジーに対して前向きなのだと思っていました。とても興味深いです。

学校の中でも、テクノロジーが入ることに抵抗をもっている人がたくさんいます。

そうなんですね! それは興味深いです。
実はカナダでも同じです。カナダの先生の多くは、 アプリが紙の本と完全に置き替わってしまうと考え、恐怖心を抱いてしまうことがあります。 でも、それは全然違いますよね!
少し話がそれてしまうかもしれませんが、多くの人から「あなたのアプリは教育アプリですか?」と聞かれます。みんな、アプリが教育的かどうか知りたいようです。でも、それって“教育”をどう定義づけするかによって変わってくると思います。 “教育的”って実は凄く主観的な言葉で、さまざまな捉え方ができると思います。 教育というものを 「Aをやって、Bをやって、Cをやる」というように、決められたステップをこなしていくことだと捉える人もいるかもしれません。
私たちの中では「こどもは遊びながら学ぶ」ということを大切にします。こどもたちは木から落ちてひざをケガしたり、自転車で転んだり、カナヅチで指を傷つけたり……痛い思いをすることもあるかもしれませんが、そうして遊びながら学んでいくのです。

 

私たちは、このような想いを胸にアプリ制作に励んでいます。
私たちのアプリは「何か質問をされてそれに答えていく」というスタイルの伝統的な意味での教育的アプリではないのかもしれませんが、こどもたちに、制限や終わりのない遊びの体験を提供したいと思っています。
色を混ぜたり、スタンプを押したりしながらアプリの中でも学ぶ。そういった遊びにおける学びを提供したいのです。
例えばモンスターのアプリはモンスターにものをつけたり、色を塗ったり、食べさせたりできます。そうしたことから、こどもたちは学んでいると思うのです。
ですから「Sago Mini」のアプリは、だれからの指示も受けず、こどもたちの思うがままに さまざまなことに挑戦しながら学べるという意味においては、とても教育的だと思います。
多くのアプリは、これをして、あれをして、と決められたステップをこなすものが多いですが、それってつまらないと思うんですよね。なんだか学校にいるみたいじゃないですか。

「SagoMini」のアプリは 世界中でダウンロードされていると伺いましが、 国によって反応の違いはありますか?

ひとつだけ確かなことは、どの国でも多くの人は「変化」があまり好きではないということです。国によって、警戒心が強かったり弱かったりするという差はあるのかもしれません。でも、そうした思いが薄まっていくには、時間が必要なのかもしれませんね。アプリは必ずしも悪いものではなく、実際は学びの手助けとなる素晴らしいものだということに先生方が気づくまで少し時間がかかるのかもしれません。
例えば、自閉症や学習障害のこどもたちにとっては、アプリはすごくいいものですよね。先生方はこどもを想うからこそ、デジタルなものが怖い、と感じたりするのかもしれませんが、その恐怖心は現実・現状に基づいたものではないと思います。
私の小さいころは、テレビを見すぎると脳にダメージを与えると言われていました。新しいものが出てくるたびに、人間は必ず恐怖心を抱くのかもしれません。こうした抵抗は日本で強いのですか?

日本も同じ状況です。一方で、日本では携帯がネットにつながるのが早かったので、若い子が早くからネットにつながるケータイを使っていました。ですから、保護者の世代交代によって、学生の頃からケータイを使い、テクノロジーの利便性やメリットがわかっている人が親になり始めているので、これからだいぶ変わっていくんじゃないかと思います。

 

なるほど。必ずしも悪いものという認識ではなく、メリットに気づき始めている人もでてきているのですね。ただ私は、なぜ親が抵抗してしまうのか、理解することもできます。こどもにタブレット与えると、ときどき我を忘れ夢中になりすぎてしまうことがあります。そんな姿を見て怖いな、と思う気持ちも理解できます。こどもは、光を放つ端末に夢中になったり、魅了されやすいですよね。
しかも時代の流れで、こどもたちがテクノロジーに触る機会がこれからどんどん増えていくと思います。こうした状況下、私たちはこどもたちにとって本当にいいもの、安全なもの、そして緻密にデザインされたものを提供していきたいと思っています。
世の中に質の高い、いいアプリがたくさんあればあるほど、保護者は安心するでしょうし。ただ、それだけではなく、やはり親がある程度こどものを管理しなければいけないとも思います。遊ぶ時間を決めたり、親と子で話し合い決めていく必要があると思います。 もちろん、毎日9時間も遊んだらよくないですよね。アプリのよさや扱い方を一人ずつに理解してもらう必要があると思っています。

 

今後、「SagoMini」として、 またアーロンさん自身が挑戦してみたいことを教えてください。

ほかのキャラクターにも挑戦してみたいです!いま扱っているキャラクターはかわいくて楽しいものばかりですが、このキャラクターたちとのつき合いは長く、毎日ずっとみているので、そろそろ新しいものも作ってみたい……と個人的に思います。ただ、恐らく今のタイミングではないと思っています。会社としてはブランドを確立する必要があるので、もう少し先の話になるのかもしれません。あと数週間したらロボットのアプリをリリース予定なのですが、実はそのアプリを制作していたとき新しいキャラクターをつくりました。でも、まったく違ったティストのキャラクターも作ってみたいと思っています。ちなみに私は、ハローキティに影響を受けました。サンリオと、あとはぐでたまが好きです。ぐでたまはすごく不思議なキャラクターですよね。

 

ほかにも意識しているキャラクターはありますか?

キャラクターというよりは、昔ながらのアートに興味があります。例えば、先にもお話ししましたが、アフリカ、ポリネシア、南アフリカの彫刻とかお面とか。日本の天狗のお面も好きです。私はキャラクターのことを、どちらかというとお面のように考えています。とてもシンプルですからね。
個人的な見解としては、こどもたちがこんなに好きでいてくれるのは、やはりシンプルだから、ということがあると思います。究極的に、二つの丸と線しか必要ないのです。アフリカの彫刻やポリネシアやニュージーランドの文化、カナダでいうと原住民のトーテムポールなども好きですね。
構造が簡略化、抽象化されたものが好きなので、そういった要素を取り入れつつ、できるだけかわいい動物に変身させようとしています。ブラジルやアルゼンチンなどの南米では、たくさん素晴らしいキャラクターがデザインされているので、そういったものも好きです。

 

なるほど。 本日は貴重なお話しをありがとうございました!

つづく

第1話:「Sago Mini」とは
2017.02.01 公開
第2話:デジタルえほんがめざすもの
2017.02.08 公開
第3話:「Sago Mini」ができるまで
2017.02.15 公開
第4話:こどもとテクノロジーと教育と
2017.02.22 公開
第5話:〈番外編〉アーロンさんとこどもたちとの質疑応答
2017.02.27 公開