カナダ・トロントにある子ども向けアプリやおもちゃを制作するデザインスタジオ「Sago Mini」における、アートディレクター兼イラストレーターのアーロンさんが日本に遊びに来てくれました。NPO法人CANVAS理事長、株式会社デジタルえほん代表取締役の石戸奈々子がお話を伺いました。
日本にお越しいただきありがとうございます。 SagoMiniのアプリの大ファンなので、お会いできて光栄です。
早速、インタビューをさせていただきたいのですが、アーロンさん自身、小さいころどんなこどもでしたか?
私は、1970年代に西カナダの小さな町で育ち、 幼いころはいつも外で遊んでいました。 木登りのほか、夏は自転車に乗ったり冬は雪で遊んだり……。 外で遊んでいないときは、 絵を描いたりスターウォーズのフィギュアで遊んだりしていましたね。 家にテレビもありましたが、わが家の方針は 「セサミストリートを見る以外、外に出て遊ぶこと」。 おかげで今でも自然が大好きですし 東京では代々木公園がいちばん好きな場所です。
自然豊かな環境だったのですね。 なぜクリエイターの道を進まれたのですか? また、今までどのようなお仕事に携わってこられたのでしょうか?
3才のころからずっと描き続けていて、 クリエイターの道以外考えたことはないんです。 2013年から「Sago Mini」で働くまで、 フリーランスのイラストレーターとして 雑誌や新聞を中心に18年間活動をしていました。
なるほど。「Sago Mini」では どのようなお仕事をされているのですか?
アートディレクターとして、 イラストとアニメーションの制作監督をしています。 「Sago Mini」はデザインを大切にしているので、 制作するすべてのビジュアルに 一貫性があるかを監督することがとても重要なのです。
最近では子どもの絵本や さまざまなおもちゃの制作にも携わっています。 アプリのデザインの原理が 他のコンテンツでも同じように採用されるよう チームのみんなと仕事をすることにやりがいを感じています。
作品づくりで大切にしていることは何でしょうか?
「Sago Mini」は、すべての作品の中心に 動物のキャラクターを採用しています。 こうしたキャラクターは、ペットというより 好奇心の強い小さな子どものようなイメージです。 「Sago Mini」がここまで特別なのは、 やはりキャラクターのパーソナリティに カギがあると思います。
私はアフリカや南太平洋などの 伝統的な部族の芸術を愛しています。 なかでもとりわけお面が大好きなのですが 抽象的な形やシンプルなスタイルが、 アプリに登場するキャラクターや 背景のスタイルなどに影響していると思います。
そして、こども向けコンテンツでときどき使われるような 鮮やかすぎる色をなるべく使わず 控え目だけどあたたかみのある 心地よい色を使うようにしています。
実は、宮崎駿の大ファンでもあるんです! 「Sago Mini」のあたたかみのある芸術的要素に、 素晴らしいプログラミング技術と 遊び心のあるデザインを融合させていることは、 オンリーワンなことだと思います。 私たちの作品がただ楽しいだけでなく、 いきいきと感じられるのは、 創造力と技術を融合しているから。
もちろん、これらを実現できているのは、 とても素晴らしい同僚がいるからです。 「Sago Mini」で働いていていちばんよかったのは やはり「人」に出会えたことです。
素晴らしいですね。 私も「Sago Mini」のシンプルで愛らしいキャラクターたちに 魅了されているひとりです。
こどもたちには、どのように 「Sago Mini」のアプリで遊んでほしいですか?
子どもたちには、木登りをしたり絵を描いたりするのと同じ感覚で 「Sago Mini」のアプリで遊んでほしいですね。 理想的なのは、ルールを設けず、自分の思うままに遊んでもらうこと。
子どもたちは、デジタルでもそうでなくても、遊びを介して学ぶことができると思っています。楽しくて安全な環境を整えたくさんの素晴らしい「遊びの場」をこどもたちに届けたいと思っています。
デジタルアプリは日本ではよく紙の絵本と比較され、 こどもに触れさせるには 否定的な考えを持たれる保護者も多いのですが、 アプリのよいところはどんなところだと思いますか?
アプリは新しい芸術の産物なので、これらを通し 子どもたちとつながっていられることは楽しく、 とても光栄に思っています。
さらに、さまざまな要素を織り込むことができるアプリの性質や 直感的なタッチスクリーンの技術は、 タブレットやスマートフォンが誕生する前にはなかったような 幅広いデザインの可能性を提供してくれます。
……とはいえ、紙の本も大好きなんですけどね。
はい、私も紙の絵本も大好きです。 デジタルならではの表現として、 さまざまなデジタルえほんが生まれることを期待しています。
21世紀を生きるこどもの理想的な遊びと学びの環境とは、 どのようなものだと思われますか?
私にはこどもがいないので専門家ではありませんが、 幼少期の原体験は永久に残ると思います。 読み聞かせや絵を描くこと、外で遊ぶこと。 これらが、いつの時代もこどもたちの生活の一部であること そこに変わりはないでしょう。 アプリから学ぶこともありますし、 丘の上でアリを観察することで学びを得ることできる。 どんなところでも、学ぶことはできると思っています。