次のテーマは「水」です。ドラム式洗濯機の中を眺めている子どもと2層式の洗濯機の写真です。
ぐるぐる回るのをずっと見てしまう子どもです。楽しいですよね。もっと楽しいのは2層式の洗濯機で脱水しているときに、蓋をあけて、止めること。手がぐるぐるっとまわってしまうかもしれませんが、何度も挑戦してそれを止められるようになると嬉しい、そんな記憶があります。子どもの頃に挑戦したのは、脱水層の中に洗い物を入れ、柔らかい蓋をのせて閉めるんです。失敗すると、飛んで行ってしまうのですが、飛んでいかないようにタイミングよくグッと押さえるように工夫していました。2層式洗濯機からは、今の全自動洗濯機よりもいろいろなことを学んだなぁと思います。
これは僕の子どもの頃の庭のプールの写真です。庭のまわりから誰でも除き見ることができるんですが、それが許されていた時代でした。
次は、先ほどのデンマークの園の写真です。この屋根には樋がないんです。樋がないことに、文句を言われるかもしれません。でも、子どもたちは、樋がないから、傘をさして、雨を楽しむんです。だから、大人がマイナスだと思っていることは、子どもにとっては、ものすごく楽しいことかもしれないのです。
これは、見る・聞く・話すなど五感に訴えることをテーマにした事例です。子どもの感覚をもう一度呼び起こしたいと考えています。今の時代は、世界を旅行していたとしても、家に携帯でつながります。離れていても相手の声も、顔もみることができるようなすごく便利な時代になってしまいました。便利な時代になったのは、それはそれで良いことです。でも、便利な時代だからこそ、一方でアナログな環境で、幼少期にこそ人間の基礎的感性・五感を養ってほしいと思い直してつくりました。2階から1階まで伝吹管、糸電話のようなものが繋がっています。テレビ電話と違って、顔が見えません。耳を当てないと聴こえません、声もスピーカーが付いているわけではないので、聞き難いし、交互に離さないとお互いに聞こえません。すなわち、その先にいる人を気遣う必要があります。この写真では、子どもがガラスの床を覗きこんでいます。友だちの姿が見えるけど、声は聴こえないので、身振り手振りで一生懸命意思の疎通を図ろうとしています。現代社会でテクノロジーを駆使するより、アナログな環境こそ、子どもが工夫するきっかけを与えられると思います。