次は食の空間の話です。僕らは、世界14カ国ぐらいの保育園を視察してきましたが、スウェーデンのとある保育園は、壁がピンク色なので、テーブルの上の食事がピンク色になってしまっています。日本ですると白いお米のご飯がピンク色になってしまうので、僕はNGだと思います。ノルウェーの園では、子どもたちのお弁当は3種類のパンがランチボックスに入ったものでした。お母さんたちは働いているので、やれる範囲でお弁当をつくった結果としてこのようなお昼になっているようですが、残念でした。スウェーデンのスナックタイムも同じような感じでした。 食の環境は、天気の良い日にオープンカフェで食事がしたくなったり、キャンプや野原で風呂敷広げておにぎりを食べたら美味しいと感じたりするように、子どもたちだって、良い雰囲気や空間で食事をすると食欲が上がるんです。いくつかの例で、1.5倍ぐらいの食事の量が上がったという報告を受けています。気持ちいいと感じる食の空間をこれからも、つくってきたいと思います。
次の写真は、広島県竹原市にあるこども園です。ここは過疎が進んだ地域でした。建築中に、市内に初めてマクドナルドができ、大行列ができていました。それぐらい新しい文化が入って来ない地域です。この保育園のオーナーはお寺さんで、単に幼稚園を立てるだけではなく、街の人をもっと気軽に呼べるにようにしたい、地域貢献したいという気持ちがありました。昼間はお母さんたちが立ち寄れるカフェに、夜は少しムーディーになります。お寺のオーナーが檀家さんとここでお酒を飲んでいるらしいです。幼稚園が地域に対して開いていくのは、今後ますます大事なテーマになっていくと思っています。
次のテーマは「トイレ」です。
先ほどご紹介したように、トイレはとても明るくなるようにしています。世界のどこにいってもトイレは明るくないです。とあるスウェーデンの保育園のトイレの話になりますが、酷かったです。まず窓がない。窓がないから暗い。ちり紙が下にポイッとおいてある。ドイツのトイレは、窓はちょっとありますが、タイルが白いだけで明るくない。僕らは、太陽の光がふんだんに降り注ぐ場所をつくっています。子どものときに、トイレの3K(臭い・汚い・怖い)というイメージがあると、子どもがトイレに行きにくくなり、排泄が出来ないから不健康になるという話は、言われて久しいですが、トイレを怖がらない場所にしていきたいと思っています。トイレに堂々と行っていい、行きたくなる場所にしていく必要があると思っています。写真の子どもたちのように、笑顔でトイレに行ってくれています。建築計画上で工夫すれば、いくらでも出来ることです。
素材について、これはカーボンという炭素繊維が使われている偽物です。これは石のようにみえますが、石ではありません、偽物です。大人の都合で偽物が使われるのです。石は割れてしまうので、割れないようにしてしまう。木も同じです。水周りに使うと、当然腐るわけですが、木のような素材は腐らないのです。子どもには、木は腐るということを教えたほうが良いと思っています。木は腐るものだし、鉄は錆びるもの。ガラスも割れにくいものを使ってしまうのですが、ガラスも石も割れるものだということを学んでほしい。ご飯を食べる食器に、きちんとした瀬戸物をつかっている園があります。当然割れます。最初は、落として、どんどん割るんですが、だんだん割らなくなっていくんです。子どもは失敗するかもしれないですが、使い続けるうちに割れるということを覚え、割らなくなる。僕らもなるべく堅木材は、偽物をつかわないようにしています。
これで終わりですが、最終的な結論は、
好奇心を奪わない事
失敗することをおそれない事
挑戦する事
です。