いくつもの国を視察されてきたと思うのですが日本と比べてどうでしたか?海外から見て日本はどうなのか?日本から見て海外はどうなのかを教えていただきたいです
多くの方が良い園がありそうとイメージする北欧も含め14カ国の園を見てきました。もちろん素晴らしいところがありますが、でも、僕が一番だと思うのは、スロベニアです。建築のデザインが素敵だったので見に行っただけなのですが、行ってみたら想像以上に素晴らしかったです。建築のデザインはモダンでカッコイイのですが、デザインだけならスペインなどにも面白い園舎があります。でも、スペインとかですと、建築家とオーナーはお互い文句たらたらなんです。オーナーは「こんなに使いづらいのをつくりやがって」とか僕らに言うわけなんです。建築家は「こんな使い方しやがって」と言う。スロベニアの園は、機能的に良くできていました。厨房も14カ国見てきた中でも、一番ハイグレードでした。ハイグレードといっても、まだ日本のほうが上です。スロベニアにはリネン室がありました。これは日本にはないので凄いなと思ったんです。一番驚いたのは、機械室まで建築家がデザインしていて、完全に日本は完敗でした。
スロベニアは、全体的に良いのですか?それとも、その園舎がよかったのですか?
スロベニアで5つ視察しましたが、全体というわけでなく、この園舎が素晴らしかったです。遊具もきちんと木で作られていて、全体的に手作り感がありました。全体に調和されていて、機能的で現場の先生も絶賛していました。スロベニアの食事は、部屋で食べるので、食事の空間があったら、もっと良かったなぁと思います。
“でもやっぱり日本の幼稚園・保育園は、やはり凄いよね”という話を、先ほど日比野さんとご飯を食べながらしていました。日本の先生はいろいろな工夫をされているので、ソフト面が素晴らしいと思うのですが、施設はどうですか?
5年ぐらい前からこういう視察を開始して、僕らもはじめは、海外に色々な知恵やアイデアの源があるのではないかと期待して見に行きました。しかし、見れば見るほど、僕らがやっている事だけではなく、日本の幼稚園や保育園の環境ってすごいなと思って帰ってくるようになりました。ソフトとハードの連携が非常に良くできていると思います。
こういう園舎をつくっても適切にしっかり使いこなしている?
日本は、本当に努力をしていると思います。仮に、建築家が使いにくいものを作ってしまったとしても、それをなんとか一生懸命使おうと努力する。外国の先生は、文句を言ってそんなの建築家が悪いんだからといって終わってしまう。
私もいろいろな国の子どもの施設をみているのですが、欧米のケースはプレゼンテーションが非常に上手だなと感じます。だからとても素敵にみえる。日本はもう少し自分たちがやっている素晴らしいことを、PRしたら良いと感じます。むしろ、世界中から沢山の視察に来て欲しいですよね。以前、園庭のお話をされていたときに、日本の園は、1年に1度の運動会のために、一生懸命に平場をつくってしまいがちだが、実は毎日通い遊べるスペースにしていくほうに賛同してくださる園が増えてきて、方向性が変化しつつあるとお伺いしました。日本の園がこう変わってきている、という点はありますか?
環境の大切さを理解してきてくれていると思います。というのは、私の幼少期もそうでしたが、昔は学校、幼稚園って、部屋が横にばーっと並んでいるだけだったと思います。そういう頃から比べると、いまの施設はいろいろなアイデアが散りばめられたものになっている。環境が子どもたちに寄与するものだという意識のもと、つくられているのを感じます。特に園庭に関しては、運動会に関しては、考え方は三者三様なのですが、1年に一回、365日のなかにしたら僅かな日数ですよね。そういう意識も段々変わりつつあります。