ー ワークショップは「5分くらいで考えちゃう!」
山添さんっていつもどんなふうにワークショップを考えているんですか?
自分の現場の教室でやるときは、ぼく今までほとんど同じワークショップしたことないんだよね。毎回、5分くらいで考えちゃう。その日きたこどもたちの表情見て変えたりもするし。
例えばこの前ね、池袋の小学校でワークショップやったんですよ。この小学校はいろんな国のこどもたちがいるって聞いてて、転校してきたばっかりの子もいる。そうすると、「みんなでできるもの」「ことばのいらないもの」っていうフレームが自然にできてくる。みんなで、だれでもできるものなら、今回は洗濯バサミ使ってみようかな~って。
やる場所や、求められてることに対してアイデアが湧いてくるんですね。
うん、もう、ぱっと浮かぶ。そしてこのときには、体育館でやれたの。しかも暗くできたり照明もコントロールできる。だったら洗濯バサミには照明をあててみようかなとか。
ゼロから考えるわけではないんですよね。発想のフックをみつけていく作業をされているのかもしれませんね。
ー 山添さんのはじめてのワークショップはいつ ?!
そんな山添さんのはじめてのワークショップというのが気になるのですが。
今日ね、昔のやつ奥から引っ張ってきたんですけどね、これは大学2、3年のときですね。
コピー機で手形をとって、郵便局で手紙を送るってワークショップ。今も、「郵便造形」ってプログラムをCANVASさんにも提供してますけど、やってることそんなに変わんない(笑)。これは「郵便が届くまで」を考えるんだよね、まず。手紙を見る人ももちろんいるし、それを運ぶ人もいる。手紙を仕分けする人もいる。そういう流れを意識してつくる。「誰かに見られながら移動する」がテーマでした。
なんですかこれ。
これはね、ストッキングで自分人形を作って、消防車にのせるワークショップ(笑)
それはまたぐっときますね。
デニールって言葉、はじめて覚えたよね。知ってる? デニール。120デニールがいいよ。
なんですかデニールって。
なんかね、数字が大きくなればなるほど分厚くって、冬用?あったかいんだよ。
なるほど…。ワークショップやっているとこどもと素材や道具の出会いを強く意識をしていくことがありますよね。そのなかで、思わぬところくわしくなっていく、という。このワークショップはどのようなものなんですか?
消防車の手配をしておいたのね。見学とか普通にできるから、一般の人でも全然できるんだけど。このころは、「街に出る」っていうのもテーマのひとつだったから、人形作ったあとに街にでて、実際に消防車にのっけたの。
ー 理由は、「美しいものをつくりたい」から。
もともと、美術作家という立場で作品もつくりつつ、ワークショップもはじめたんですよね。ワークショップをそもそもやろうと思ったきっかけは何なんですか?
美しいものをつくりたかった。美しいものをつくるために、作家としては、工事現場によくある網を公共空間に展示したりする作品をつくってた。でも、自分だけでものをつくって展示するだけじゃ限界がある。もっと美しくなるためにはどうしたらいいんだろうって考えると、もっといろんな人が「つくる」ようになって欲しいと思ったんだよね。
その手段としてワークショップを位置付けているという。
うん。こどもは、そもそも「見てもらう」って意識が必要ない人たちだよね。「つくるよろこび」だけでできたものは、とても美しいものなんじゃないかって思った。「価値」とかが出てくると、「競争」が生まれて美しくなくなっちゃう。むしろ「つくるよろこび」からしか、美しいものは生まれないんじゃないかとも思う。
だから大人向けとかではなく、こども対象に始めた、という。
美っていうのは、「なにか気づいてやってみた」っていうことの中にあるんじゃないかなって。それができるのはこどもだけだと思う。
大人はむつかしいんですかね?
うーん(笑) いつか犬向けにはやってみたい(笑)
犬!? それはそれで気になりますけど。
まあ、犬向けにはいつかね。また今後(笑) でも美しいってなんだろうっていうのは未だに探っている。普段ものをつくれなかった子がいて、でもあるとき、輪ゴム100本つなげることができて大笑いして帰っていく、っていう時間があったのね。
できなかったことができるようになった、っていうことと、「工夫」することや試行錯誤することへの楽しさが得られた瞬間が立ち上がったということですかね。
うん。そういう、こどもの成長や時間の流れって要素からつくられる美しさもあると思う。たまたま、「あ、これかも?」っていうのがたまに出てくる。それが美しさにつながる。「これだ!」っていうのは今もないかも。輪ゴムの話みたいに、たまに手応えがあるくらい。いろんなバリエーションの美しさをつくりたいなと思う。